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それから干支が一周を過ぎた頃、母は五十代前半で人生の幕を下ろした。一応は病死であるが、半分はストレス過多で亡くなったようなものだと思う。
離婚を回避してからの母はトラブルメーカーみたくなっていった。紡がれる言葉は不満と悪口ばかり、時には近くにいる知らない相手にすら喧嘩を売る始末であった。
ひょっとしたら鬱っぽくなっていたのかもしれない。いや、そうなっていた可能性すらあった。私は結局折り合いが悪いままだったので母の本音は分からない。ただきょうだいも母の変化に気付ききれなかったと後悔の声を漏らしたことが何度かあった。
母の葬儀を執り行うことになり、いくら不仲だったとはいえ離婚しなかった以上父が喪主となった。しかし親戚が来たとはしゃぎ出し、はっきり言って役立たずであった。葬儀屋さんもそんな父に呆れ、しまいには長女である私に伝達してくる始末であった。
結局段取りの立ち会い諸々は私がほとんど引き受け、父も責任放棄とばかり私に押し付けてきた。責任放棄しくさりおったんやから喪主の挨拶くらいちゃんとせぇよと思っていたが、期待は見事裏切られテンプレをまんま読むという頭の悪さを晒していた。
これが『女の幸せ』いうやつなんか? 私はこの日ほど『女は結婚して子を持つことこそ幸せ』が詐欺やと思ったことは無い。
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