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「さあ、着いたぞ!」
馬車に揺られること一時間あまり―――、やっと着いたウィディス国首都ペルゲールの街を前に、カラドとエルダンが揃って腰に手をやる。
長い事座りっぱなしで、すっかりお尻が痛くなってしまった二人に対し、サハナはと言うと、途中で睡魔に負けて気付いた時にはエルダンに膝枕をして貰ったお陰で、お尻は左程痛まなかった。
「さて。早速ペルゲール城に向かうとするかね」
腰を摩りつつ、カラドはよっこいしょと荷物を肩に担ぐ。
サハナも素早く身の回りを見回し、忘れ物の有無を確認した。
「カラドさん、悪いんすけど先に向かっていてください。そろそろラズに餌やらないと」
そう言い、エルダンは慌ただしく大荷物を軽々と担ぐ。
今現在、ラズベルは彼の足元に落ちる影の中に潜んでいる。
一言に影の中というが、実際は魔術で空間を捻じ曲げて作った小さな空間である。
サハナの使い魔テオのように使い魔が小さければ長時間、中に入っていても左程問題は無いが、ラズベルほどの大きさではある程度の空間が必要だし、空間を作るに主人と使い魔の双方の魔力が必要である。
互いに負荷が掛かる為、出来るだけ早く外に出してやりたい所だった。
「六時半に東通りのハルフィンドで良いっすか?適当に服は繕って来るんで」
「承知した。こちらで予約は取っておこう」
「助かります。それじゃ!」
合流場所を伝え、エルダンは駆け足で何処かへと駆け行く。
そんな背を見送り、サハナはカラドと共に前方に聳えるペルゲール城へと向かった。
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