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「おぉ、起きたかい。嬢ちゃん」
そんな声に、二人して庭先へと視線を向ける。
酒瓶を手に、カラドがミレイシャと共に様子を見に来てくれた。
「カラドさん、ご心配お掛けしました」
「何、気になさんな。疲れが出たんだろう」
気さくに答え、彼は軒先に摺り足で寄ったサハナの頭を撫でる。
大きな掌は温かくて頼もしかった。
その横でミレイシャはテキパキと盆に乗せた追加のおかずを並べ始め、エルダンは礼を言いつつ、差し出された器を受け取った。
「リーも流石に疲れただろう。今夜くらい一杯どうだ?」
ガラスのお猪口を差し出し、カラドは陽気にエルダンへと酒を勧める。
しかし、彼は不意に怪訝な顔をした。
「…あ。こりゃ、すまん。昔の呼び名はご法度だったな…」
しまったと口元を押さえ、目を泳がせるカラドに対し、彼は呆れ顔で溜息交じりに額を押さえる。
墓穴を掘られるところだった。
「丁度、俺の正体については喋った所なんでノーカンにします。今は鳶かエルダンと呼んでください」
呆れ気味に窘めつつ、彼は差し出されたお猪口を受け取る。
ここまで明かしたのだから、最早かつての名前を伏せる必要もない気もするが―――、どうにも昔の事はあまり掘り返して欲しくなさそうなので、サハナはあまり突っ込まないことにした。
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