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第三話 忍び見る世界(5)
翌日、目が覚めたのは八時を過ぎた頃だった。
時間に正確な両親のお陰で、サハナの体内時計はしっかりしており、習慣的に六時前後には目が覚めるが、この日は例外であった。
連日の騒動や疲労を考えて皆、起こさずにくれたらしい―――。
少しゆっくり目の朝食を頂いた後、先にこの後の予定を練っていたカラドとエルダンに合流し、予定を確認した。
今現在、サハナ達のいるジャースフ領から一先ずの目的地である首都ペルゲールは馬車などを乗り継いで、二時間の場所にある。
首都からはジャースフ領主の伝手により、ウィディス国王等が公務で使用する公用船を出して貰えることとなった。
用事でカラドもそこまでは同行してくれるとのことだ。
十一時頃に少し早めのお昼ご飯を頂き、カラドの家から程近い駅で、同行してくれた狩人の三人とは別れた。
その際、近くの宅配便で旅客船襲撃から、ここまで抱えて来た荷物―――と言っても、事件時に着用していた制服くらいだが、それらを自宅に郵送。
多少身軽になった所で、エルダンとカラド二人による心強いエスコートで、いよいよ首都へと出発した。
ウィディス国に足を踏み入れること自体が初めてのサハナにとって、その道中は目新しい物が多かった。
現代の経済発展とインフラの発達により生活水準は同等であるが、ウィディス国はラピア国に比べて国土全体に山谷が多く、そのお陰か水に恵まれている。
故に、ラピア国では珍しかったり見たこともない植物があり、農地には青々と茂った稲穂が揺れ、街には豊かな水を利用した水景施設が目立った。
特に通過地点のエストキリスに関しては、師匠シエナの生まれ故郷と聞いていた所為もあり、交通機関の待ち時間、サハナは時間の許す限り街並み散策を楽しんだ。
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