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「申し訳ありません。お待たせしました」
その声に、はっと二人して振り返る。
漸く仕事から抜け出せたのか、何処か疲れた様子で国王が侍従と共にやって来た。
「すまん、カラド。すっかり待たせてしまった」
「何、忙しいのは承知の上だ。こちらも無理を言った」
親しげに言葉を交わし、王とカラドは握手と共に互いに再会の抱擁を交わす。
その流れるような一連の仕草は、彼等が名実ともに親友であることを示していた。
「サハナ嬢、ご無事で何より。お久しぶりですな」
「お久しぶりです。この度は突然の訪問にも拘らず、ご配慮頂きまして心より感謝申し上げます」
二人の挨拶が済んだ所で、サハナは礼儀作法に則り会釈を交わす。
年の功もあるのだろうが、バルト王は君主としての威厳に溢れた人である。
背筋をしゃんと伸ばし、振舞い方に気を配った。
「いやはや…、しかし、すっかり大人びましたな。随分と背も伸びたようで…」
「恐縮です」
他愛もない話を交わしつつ、本題に入るべく王に促されて再度着席。
現時点までに上がってきたイルン岬での一件の調査結果も交えつつ、ヴィラーディアンの動向に関する報告やこの後の段取りなども話し合った。
「…では、出発は夜八時の便という事で宜しいですかな?」
「はい。お願い致します」
僅か三十分程度の短い時間であったものの、とんとんと話が決まった。
サハナの承諾の一言と共に、王の侍従は船の手続きに向かい、一段落着いたことを確認するようにカラドは小さく溜息を零した。
「すまんな、バルト。無理を言って…」
「何、全てはルリアスの為だ。しかし、まさかお主が弟子を取っていようとは…」
「まあな…」
三人しかいなくなった途端、カラドと王の口調が砕けた。
時間も押しているし、話の流れ的にどうしてもエルダンの事を告げねばならず、止む無く、彼のことをカラドの弟子という事にしたが―――。
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