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「………、…本当か?」
疑うような王の視線と問いに、淹れ直して貰った茶を啜ろうとしたカラドは思わずカップを持った手を止めた。
カラド自身、嘘の上手い性質ではないが―――…。
「お主の事だ。その者が本当に弟子ならば、シャイだろうが方向音痴だろうが、問答無用で引き摺ってでも場数を踏ませんと登城させるだろう?ミレイシャちゃんの時に、獅子の子落としで…」
「嗚呼ぁ!その話は…!ミレイシャの件は無しだ!サハナ嬢に嫌われる!」
赤面し、カラドは慌ただしく話を止める。
少々続きが気になるが彼の慌てぶりを見る限り、今は野暮な質問は止めておこう―――と、思うサハナは口を噤んだ。
「…で?」
腕を組み、バルト王が再度問い質す。
完全に見透かされている。
流石は一国の王と言えよう。
次期時導の巫女であるサハナと行動を共にしている分、親友が一目を置いているとは言え、その素性が気になるらしい。
カラドは降参とばかりに頭を掻くと、耳を貸せとテーブルを挟んで王を手招き。
王はテーブルに手を突いて顔を寄せ、親友の囁きに耳を澄ませた。
「…なんと!それは真か…⁉」
少しの間をおいて、驚嘆の表情と共にそんな声が漏れた。
驚くのも無理はない。
聖地逃走に加えて、色々とやらかしている彼である。
漆黒の義賊などと持て囃される人物が護衛とあっては、示しがつかないと王は彼の同行を反対するだろう―――…、と思いきや。
「ならば是非、聖地まで同行願おう…!」
どういうことか、王はノリノリである。
ヴィラーディアンの戦艦二隻を瞬殺するだけの技量は確かに素晴らしいが、その他の前科は放って置いて良いのだろうか?
そもそも、カラドはどういう説明をしたのか―――、第一に気になるところである。
「こうはしておれんな!もう時刻も迫っていることだ、早く行ってやらねばなるまい!」
先程とは一転して、王は急ごうとばかりにカラドの背を叩く。
―――そんな時であった。
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