20人が本棚に入れています
本棚に追加
「失礼致します…!」
その声と共に、ノックも適当に王の秘書が大層申し訳なさそうに部屋に駆け込んで来た。
サハナ達が何事かと首を傾げる中、秘書はそそっと王に歩み寄った。
「陛下…、申し訳ありません」
前置きの上、秘書はそっと王に何かを耳打ちする。
王はその連絡に、思わず眉を顰めた。
「あやつは、待ても聞けんのか…!」
思わず漏れたのは落胆の呟きだった。
僅かに頭を抱え、バルト王は仕方ないとばかりに頷いて見せる。
それを確認し、秘書は酷く恐縮した様子で会釈。
慌ただしく席を外した。
「サハナ嬢、申し訳ありません。突然ではありますが、私の孫を紹介させて頂いても?」
そんな質問に、サハナは何気無しに構わないと答えてしまった。
後の祭りではあるが、答える前にその横でカラドが顔を引き攣らせているのに気付くべきであった。
「失礼致します!」
そう待たずして元気過ぎるノックを伴い、そんな声が轟いた。
秘書の手により開かれたドアの前に現れたのは、上等な礼装を着こなしたダンディな紳士であった。
バルト王の孫とあって顔付はよく似ているが、風格のある王に相対して、その男の雰囲気は何処か軽過ぎる気がした。
気さくと言ってしまえばそれまでだが、何処か王族にしては威厳が薄い気がした。
ちなみに世襲制を取らないルリアスの王家は、現国王から見て二親等までを王族と称する。
そのため国王が交代する際には、その親族に与えられている爵位などは元より持っている場合を除き、返還することが義務付けられている。
また、王家の姓を名乗るかは当人の自由である。
最初のコメントを投稿しよう!