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「オーク殿、お久しぶりです。息災で何よりです!」
ツカツカと歩み寄り、やや強引にカラドと握手を交わす。
その勢いに、常にドンと構えているカラドも気圧されてしまいそうだった。
「久しぶりですね、カレオ卿…」
そうカラドが呼んだことで、サハナにそこはかとない緊張が走った。
エルダンに連れて行って貰った義勇団ウィンフェールのメンバー達が、その男の事を口々に悪評を漏らしていた。
ある人は貴族主義者と呼び、ある人は女誑し、そして顔に酷い傷を受けた女性は、ドルフィエルダの糞野郎と―――…。
「貴女がサハナ・リースマン殿ですね?」
確認するように名を呼び、機敏な動きでこちらを見据える。
頭の先から爪先まで―――まるで、品定めするような視線だった。
「お初にお目に掛かります。カレオ・ドルフィエルダと申します…!」
口調は慇懃ながら何処か見下すような笑みを浮かべ、握手を求めた手が差し伸べられる。
会ってすぐではあるが、この人とは馬が合いそうにないと思った。
「初めまして、ドルフィエルダ卿…」
礼儀上せざるを得ず、口角を上げて握手を交わす。
時導の巫女になると決まって以来、社会人としての立ち振る舞いや愛想の微笑みは特訓して来た。
一癖も二癖もあるセビアスや曲者揃いの人間達と同等に渡り合い、星間外交をこなす母のスパルタのお陰で、その礼儀作法は自然に出せるまでになったが―――…。
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