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明け方から降っていた雨が止み、乾き始めたグラウンドに残る水溜まりに青空と白い雲が映る。
潤いを得た木々は若葉に陽を蓄え、夏に向けて緑の色を深めていた。
気の早い夏の虫達が喚く中、それを掻き消さんばかりの声援が飛び交う。
只今の授業は、危険回避を想定した演習である。
仕掛けられた障害物には、魔法が掛けられており、普通に飛んだり跳ねたりでは避け切れない。
迫って来る障害物を魔術で破壊したり弾き飛ばしたりしながらゴールを目指し、そのタイムを競う競技だ。
束ねた長い髪を振り乱し、サハナは容赦なく襲ってくる障害物を避けては、蹴散らしていく。
一緒にスタートした仲間は、残念ながら早々に障害物に一撃を食らい外野に出されてしまった。
気付けば、一人だけ生き残ってしまい、寂しいのと怖いのとで、もう死に物狂いだった。
演習とはいえ食らう一撃は中々痛い。
打ち所が悪いと怪我をする。
「いやぁあぁっ!」
叫びながらゴールポールにしがみ付き、へっぴり腰で何とかゴール。
リタイアした仲間からは拍手を送られたが、タイムを計っていた担当教諭のフォベル先生は渋い顔をしていた。
「この前よりタイムが落ちちゃったわね」
「だってこの障害物、ぶつかると痛いんですもん~!」
半泣き状態のサハナは、尚もゴールポールにしがみ付いていた。
前回タイムを縮めようと早まった結果、盛大に障害物に一撃を食らい、大変に痛い思いをした。
その時の痛みをまだ体が覚えていて、ついビビってしまった。
「この訓練は早さが肝心よ?怖いのは分かるけど、素早くゴールを目指さなきゃ…」
背を摩って宥める先生だが、サハナはすっかり怯えていた。
本来この演習は、警官や軍人を目指したり大学受験をしたり―――、もしくは賢者志望の学生が選択する上級者コースの授業だ。
時導の巫女になるに当たり、サハナには特別カリキュラムが組まれ、普通のクラスでの授業の他、一日当たり一、二時間の特別講義が追加されている。
これもその一つだった。
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