89歳

2/2
前へ
/21ページ
次へ
 冴子は考えた。小川が金持ちなら、中途半端な年齢より、むしろ89歳の方が本当に先は短いのだから、結婚してしまおうかと。  冴子は、即断した。 「わかった。私、おじさんと結婚する。父さんや母さんは、いつも私に、おじさんと結婚したらいい、って言ってるし。私も、ここにいたって何も楽しいことない。お嫁さんになるわ。」  小川はパアッと明るい顔になり 「おお、よくぞ決心してくれた。んじゃ、さっそく、おじさんといっしょに行くべ! 何か持って行きたいものあったら、この風呂敷に包め。」 と、薄汚れた風呂敷を取り出した。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加