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その日の夕方、雨が降ってきたから私は屋根がある場所で雨宿りをしていた。 駐車場の方を見るとまださっきの迷い猫が歩き回っていた。 ずぶ濡れになって疲れも出て足取り重くなりながらそれでも必死に探し続けていた。 少し観察していると何かを見つけたみたいで最後の力を振り絞って1台の車の方に向かって走り出した。 「あ!!危ない!」 キキーーッ ドンッ 車のブレーキ音の直後に鈍い音が響き渡る。 道のど真ん中で横たわる1匹の猫。 駐車場に停まっていた車から顔色を変えて飛び出してきた1人の人間が轢かれた猫を抱きかかえて何度も名前を呼ぶ。 猫を轢いてしまった車から降りてこれず放心状態の運転手。 私の脳裏に刻まれた凄惨な記憶。 その日から1ヶ月くらい震えが止まらなかった。 毎日のようにあの瞬間が夢に出てきて眠れない日々が続いた。 そして朝まで「ごめんね、ごめんね。」 と呟き続けた。
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