バビ様に出会う旅

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 バリアンの家から、さらに山道を登る。もはや道とは言えない山の斜面を、車は跳ね飛んで進んだ。僕たちは、ひっくり返らないように抱きついて支えあう。さすがに、この揺れに気分が悪くなった。喉へこみあげてくる吐き気を、どうにか抑え込む。  道なき道は、鬱蒼と茂る木々のトンネルへと続いていた。日が暮れ、あたりは暗い。車のヘッドライトが枝葉の隙間に吸い込まれ、数メートル先さえ見通せなかった。  やにわに、ムトーさんがブレーキを踏んだ。 「着きましたよ。ここが、デワ・バビの寺院です」  車を降りると、目の前にはチャンディブンタルと呼ばれる割れ門があった。山を半分に割ったかのような、左右対称の石門だ。ガイドブックに載っているような立派なものではなく、せいぜい玲子の身長くらいしかない。それでも、ここが寺院の入り口であることが分かった。 「ここからは、お二人で行ってください。参拝理由がない私は、むやみに寺院には入れないので。あと、これを……」  ムトーさんが車の中から、黄色いサロン(腰巻)とスレンダン(腰帯)を手渡してくれた。寺院に入るときの、最低限の礼儀らしい。二人で着用すると、おもむろに割れ門をくぐった。 「これ、ガネーシャかな」  寺院の正面に置かれた、二メートルほどの石像。幾何学的な模様が彫られた台座に、ふくよかなお腹をした動物があぐらをかいて座っていた。頭と首に、豪華な装飾品をつけている。確かに、ヒンドゥー教の、象の頭を持つ神様ガネーシャに似ていたが、よく見ると鼻が短かった。 「たぶん、象じゃなくて、豚だよ。これがデワ・バビ様なんだよ、きっと」
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