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年度末の忙しい時期に休暇をとらせてもらった会社の同僚たちへ、お土産は大奮発せざるを得なかった。美容品やらチョコレートやら雑貨品を、キャリーバッグに入るだけ買い込む。
せっかくなので、ビーチでくつろぐ。雨季のせいか、海は濁っていた。それでも、浜辺で昼食と昨夜飲めなかったお酒をいただく。
酔った勢いもあって、免税品店で旅行記念のペアリングに大枚をはたいた。
その足で、ングラライ国際空港へと送ってもらう。ムトーさんに何度も心からの感謝を伝え、日本から持ってきた純米酒をお礼に渡した。ムトーさんは、こちらが恐縮するほど頭を下げてくれた。
「よければ、これもどうぞ」
玲子が非常食用にと日本から持ってきたカップラーメンを渡すと、純米酒のときよりも大いに喜んでくれた。
ムトーさんと手を振りあって別れ、空港で搭乗手続きを済ませる。ラウンジでゆっくりする暇もなく、僕たちは機上の人となった。
こうして、二泊四日のバリ島旅行は幕を閉じる。
子供が欲しいという願いを、デワ・バビ様が叶えてくれる……そんな実感はまるでなかった。願いが届いたかすら分からない。ただ、南国の空気が僕たちの心を開放してくれたことは事実だし、いくつかのカルチャーショックを体験して見識も広がった気がする。
そして何より、この旅行を通じて、より妻を好きになった。惚れ直した。言葉にするのは、かなり恥ずかしいけれど。
もし、本当に願いが叶うのなら、そんな心境の変化が影響しているのかもしれない。
太平洋の真上で、玲子の寝顔を見ながら、そんなことを考えていた。
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