バビ様に出会う旅

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 軽く寝覚めのジュースを一杯飲むつもりでホテルのモーニングビュッフェへ立ち寄ると、あまりの品揃えにテンションがあがって、ついつい食べ過ぎてしまう。ホテルビーチの散策は延期して、お腹を抱えながら部屋に戻ってまたひと眠り。  正午、現地コーディネーターさんとの待ち合わせに遅刻しそうになり、慌ててロビーへと向かう。コーディネーターさんの顔は知っていた。日本から何度もスカイプで打ち合わせをしていたから。バリ在住十五年目になるという日本人の中年男性、武藤さん。僕たちを大げさなハグででむかえてくれた。 「武藤なんて呼ばれると、日本にいるみたいじゃないですか。私のことはムトー(トにアクセントを置いて、やたら長く伸ばす)と呼んでください」  ムトーさんの運転する車は、ジンバラン地区からヌサドゥア地区へと向かう。安全運転の車の両側を、無数の原付バイクが追い抜いていった。 「とりあえず、お腹減ってるでしょ。すごいところ、予約しときましたから」  まさか朝食を食べ過ぎたなんて言えず、玲子と二人で苦笑いする。でも、案内された場所は、満腹でも訪れる価値のある場所だった。僕たちの予算ではとうてい宿泊することのできない、星が五つもつくホテルのレストラン。ムトーさんの計らいで、宿泊客じゃない僕らでも利用させてもらえたのだ。ランチだけなら、丸の内あたりとかわらない値段だった。  格式高い内装と、王族にでもなったかのような接客、フランジパニの花が山盛りの大皿にこじんまりと上品に盛られた肉料理。どれも素晴らしかったが、一番心を奪われたのはロケーションだった。山肌を覆う緑の木々。眼下に広がる青い海。はるか遠くで金色に輝く寺院。南国の日差しが、すべてのコントラストを際立たせていた。料理の味は喉元を過ぎてすぐに忘れたけど、この見事な景色は脳裏に焼き付いたまま生涯消えることはないだろう。
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