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「んで、メリーさんだっけ? あんたいつまでそこにいるの」
「あなたがここを開けてくれるまでです」
「じゃあ俺がここを開けなかったら?」
「きっと泣きます! わたしが! 泣いちゃいますよ! それも大声で! それでもいいんですか!?」
決意たっぷりにきっぱりと言われた。正直泣きたいのはこちらの方だ。
「あー、メリーさん。アンタの事情はわかったけど、俺の方にも事情ってのがあるわけ。それはわかる?」
「わかりません!」
「わかれよ!」
「ひぃっ!」
……人を驚かせる存在が驚かされてどうすんだよ。
「あー……大きな声出して悪かったよ」
「い、いえ……」
どうやら本気で怖がらせてしまったらしい。ちょっと反省。
「メリーさんさ、ちょっとだけ話しないか?」
「な、なんでしょうか……つ、壺とか印鑑なら買いませんよ!」
「それはこっちのセリフだ!」
いかんいかん。どうにもこのメリーさん(自称)と話してると調子が狂う。
「俺さ、恥ずかしい話、働いてる会社っていわゆるブラック企業ってやつでさ、俺今日まで十九連勤してて、朝起きたら記録更新の二十連勤になるんだよ。朝の八時から夜の十時までずっと仕事。休憩なんてないから、仕事しながら飯食わなきゃいけないし、上司は怒鳴ってばっかで給料も安い。このままじゃ体がおかしくなるってわかってるし、さっさと辞めればいいって思う。けどさ、頑張って入った会社だからもう少し頑張らなきゃって思うと辞められないんだよ。それに親が無理して大学に行かせてくれたってのも知ってるし、地元に帰ったら間違いなく心配する。これ以上迷惑かけたくないんだ」
気づけば見知らぬ誰かさんに今置かれてる境遇を話していた。ずっと心の中に抱えていたモヤモヤしたものを吐き出したかったんだろう。それがたまたま目の前にいたメリーさんだったのか、それともメリーさんだったから話したのか。
「そんなわけだからさ、悪いけど今日のところは──」
「あ、すいません。LINEきてたので聞いてませんでした」
「聞けよ! あと人が話してるときにスマホ見てんじゃねーよ!」
「ひぐぅ!」
そんなわけでもう一度最初から話した。つーか、メリーさんのLINE友達ってどんな奴だよ……。
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