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「えっぐ……ひぐ……」
「……なにも泣くことはないだろ」
「だ……だって……そんなのひどいじゃないですか……社員は使い捨ての駒じゃないんですよ!」
「そうなんだけどさ、今の世の中じゃそれが当たり前みたいな風潮だから仕方ないんだよ」
「仕方ないってそんなすぐに諦めてどうするんですか!? あなたがそんな気持ちだからダメなんじゃないんですか!?」
なぜか怒られた。
「日本人は忍耐こそ美徳と思っている節がありますが、そんなのはただの詭弁です! 正直者が馬鹿を見る、そんな言葉もあるじゃないですか」
「でもさ、こんなご時世。すぐに就職出来るかわからないし」
「だったら見つかるまで探せばいいじゃないですか! そりゃ今は希望する仕事なんて見つかりにくいですが、その前に体が壊れちゃ仕事どころじゃないんですよ!」
メリーさんの言う通りだ。このままじゃダメだ。それでも一歩踏み出す勇気が出ない。もし就職出来なかったら、いつもそう思う。なのに、彼女の言葉は俺の心を大きく揺さぶる。
「それにですね、あなたが頑張っても、それはあなたが評価されているわけじゃなく、いいように使われているだけです。それでいいんですか」
「……よくはないけど」
そんなこととっくに昔に気づいてた。でも俺が抜けたら、俺がいなくなったらと思うと、この会社を辞めてやろうという気になれなかった。
「人間、人生は一度しかないんです。時には諦めることも大事なんです。でも、ここぞという時は諦めることを諦めないといけないんです!」
メリーさんの強い言葉が俺の中にあった分厚い壁をぶち壊す。
「……見つかるかな」
「大丈夫ですよ! このメリーさんが保証します。どーんとぶつかっていけばいいんですよ」
「はは……なんかメリーさんに励まされるとは思わなかった。けど、お陰で元気出た。ありがとう」
「どういたしまして」
この自称メリーさんと話していると不思議と元気が出る。なんだかここまでくるといっそのことドアを開けてみてもいいんじゃないかと思ってしまう。
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