メリーさんとファーストコンタクト

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 奥に引っ込むと冷凍庫から保冷剤と濡らしたタオルを持ってきた。 「とりあえずこれで冷やして。しばらくしたら腫れも引くと思うけど、一応医者に診てもらって。あと治療費出すから診てもらったら連絡して」 「あ、え、いや、そんなわけには……」 「元はといえば俺のせいでこんな目に遭ったんだからせめてもの償い」  有無を言わせる前に自分の名前と連絡先が印刷された名刺を渡す。さすがのメリーさんもとっさのことで受け取ってくれた。 「それじゃあまた。あ、ちゃんと冷やして朝になったら医者に行くんだぞ」 「は、はい……それじゃ失礼します」 「うん、おやすみなさい」  そう言うとメリーさんは去っていった。途端、訪れた静寂。その中でふと思った。 「……そういや連絡先渡す必要なかったな」  向こうからかけてきたんだから当然といえば当然だった。それよりも、ポケット入れたままにしていたスマホを見る。時刻は無情にも午前四時を過ぎていた。  ……まいったな。ここで寝たら遅刻は確実、それどころか下手すりゃ無断欠勤だ。しかしそれでも、どことなくそれでもいいかと思っていた。 『だったら見つかるまで探せばいいじゃないですか! 体が壊れたらそれまでなんですよ!』  メリーさんの言葉だ。それもそうだ。今がダメでも次がある。その次がダメならまたその次を探せばいい。  また……来るかな? きっと来るんだろうな。そんなことを考えながらそっと部屋の鍵をかけた。
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