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ライラは、不安な気持ちを抱えながら家へ戻った。
部屋の中で、もう一度アルドーの手紙をみつめる。
そこには、もうなにもかもがいやになったということ、この町を離れるということ、そして、最後には「僕のことは忘れてくれ」と書いてあった。
(アルドー…ひどいわ…
あなたの夢は私の夢でもあったのに…
辛かったら、私にその辛さや苦しみをわけてくれれば良いのに…
どうして、自分だけでなんでも背負おうとするの…!)
溢れ出る涙を拭いながら、ライラはもう一度アルドーの立ち寄りそうな場所を考えた。
しかし、どう考えても思い当たる場所はない。
アルドーとでかけるのはいつもこの町ばかり…
それも、絵を描くために風景を見に行くことがほとんどだった。
ライラの知る限り、アルドーがどこか遠くへ旅行をしたという話も聞いたことはなかった。
(アルドー…一体、どこへ行ってしまったの…)
*
その頃、ジュリアンは隣町へ向かっていた。
隣町までの民家や行き交う人々に話を聞いてみたが、アルドーらしき者を見たという者はいなかった。
しかし、アルドーが早朝にでかけたとしたらそれも無理はない話だ。
隣町に着いたジュリアンは、手当たり次第に情報を聞きこんだが、やはりアルドーの手掛かりはまるでなかった。
「畜生!どうなってるんだ。
こんなに情報がないなんてまいったな。」
『方角を間違ったのではないか?』
「なに?」
『あの町に着く前に、おまえが通って来た町があるではないか。
そっち方面に行ったということも考えられるぞ。』
「そうか!そっちがあったな!
よし、引き返すぞ!」
『今から戻ると真夜中になるぞ。』
「かまうもんか!
早く、みつけなきゃ大変だ!」
ジュリアンは今来た道をまた戻り始めた。
アルドーを救うためにひたすら走り続ける…!
*
『大丈夫なのか?』
「……このくらいでへばってたまるか!
俺は丈夫なのだけが取り柄なんだからな。」
『良くわかってるんだな。
しかし、少し休むか食べるかしたらどうなんだ?
昨日からなにも食べてないんじゃないか?』
「町に着いたらなにか食うさ
さ、あと少しだ、頑張るぜ!」
反対側の隣町に着いたのは、まだ夜も明け切らない時間だった。
「やっと着いた…!
早く、誰かに話を聞かないと…」
『まぁ待て、こんな時間に訪ねても誰も開けちゃくれないぞ。
夜が明けるまでしばらく休んだらどうだ?』
「…仕方ない。そうするか…」
ジュリアンは、木陰に横になるとすぐさま眠りにおちた。
『……横になった途端に眠れるとは…
これも一つの特技だな…』
エレスが眠るジュリアンを見守る中、やがてしらじらと夜が明けた…
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