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『……おまえ…もう少し品良く飲めないのか?
牛や豚でももう少し上品に食うぞ。』
「悪かったな!どうせ俺は下品だよ!
そんなに上品なのが好きなら、お上品な子豚とでも旅したらどうだ?」
『なぜ私が子豚と旅をせねばならんのだ?』
「……おまえはもう少しジョークってもんを勉強すべきだな…」
『なるほど…今のはジョークだったのか。
あまりにも質が悪い話なので、ジョークとは気が付かなかった…』
「あぁ、そう…
すみませんね。
下品な上に冗談もうまくなくて…」
ジュリアンは、向かいのエレスと顔を合わさないように、横を向いてスープをすする。
「あ…」
ジュリアンの目が、先程とは別の絵に止まった。
「この絵…さっきの…」
厨房の方を振り向くと、そこには先程の店員が、じゅうじゅうと焼ける音を立てるステーキを手に微笑んでいた。
「これ、あんただよな!」
「ええ…」
店員はほんのりと頬を染めながら、頷いた。
「もしかしたら、この絵はあんたのいい人が描いたのか?」
「えっ?なぜです?」
「そりゃあ…わかるさ。
この絵にはあんたへの愛情みたいなもんが感じられるからな。」
「本当ですか?」
店員の顔がぱっと明るく輝いた。
「やっぱりそうなんだな。」
店員は黙って頷いた。
「これは、私の恋人・アルドーが描いてくれたものなんです。
彼は、画家になるのが子供の頃からの夢なんです。
私も、彼ならきっとなれるって信じてるんです!」
「あっちの絵も彼氏の絵だな?
俺は、詳しい事はわからないけど、どっちもすごく良い絵だと思うよ。
実力はあるんじゃないかな?」
「本当にそう思われますか?嬉しい!
実は、もうじきこの町で絵のコンクールがあるんです。
そこで優勝すれば彼の夢も夢じゃなくなるんです。
彼も今度はものすごく気合いを入れてて、半年も前から描きはじめて完成も間近なんですよ。」
「そうかい。それは楽しみだな!
俺もコンクールは必ず見に行くよ!」
「ありがとうございます!
あ…私ったらどうしましょう。
おしゃべりしてたからお肉が冷めてしまいましたね、今、すぐに別のものを…」
「なぁに、俺は猫舌だから、ちょっと冷めてるくらいがちょうど良いんだ。」
ジュリアンは、店員の手からステーキの皿をひったくるようにして受け取った。
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