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「いらっしゃいませ。
すみませんが…あ!あなたは…」
「あぁ、良かった。
遅くなったから、もう閉まってるかと思ったぜ。」
「ええ、もうそろそろ閉めようと思ってた所だったんですよ。
でも、あなただったらけっこうですよ!
どうぞ、中へ!」
ジュリアンは、宿にも戻らず鉱山の帰りにあの店へ立ち寄った。
この町に着いて最初に入ったあの店だ。
「ありがとうな。だけど、食事は宿か酒場で食べるから良いんだ。
服もこんなに汚れてるし、このまま席に座るのも申し訳ないからな。
実は、今日はあんたに渡したいものがあってな。」
「え…?渡したいもの…ですか?」
ジュリアンは、胸ポケットからハンカチにくるまれたものを取り出し、その中の1つを店員に手渡した。
「これは…?」
店員はジュリアンに手渡されたものを不思議そうに眺めている。
「今、採ってきたばっかりなんだ。
この状態だとよくわからないかもしれないが、オパールなんだ。
磨けば、とても綺麗なものになるぜ!」
「オパールをみつけたんですか!?」
「ほら、こうやって見てみなよ。
色が変わるのがわかるだろ?」
ジュリアンは、店員の手を取り石を見る角度を変えさせた。
「本当だわ!まぁ、いろんな色が絡み合ってすごく綺麗!」
「オパールは愛と希望の石とか幸せの石って言われてるんだ。
あんたの恋人が画家になれて、そして二人が結婚して幸せになれるように…なぁ~んてな。」
「あ…ありがとうございます!
すごく嬉しいですが、本当にいただいても良いんですか?
オパールって高価なものなんでしょう?」
「あぁ、構わないよ。
磨いてペンダントにでもしてもらってくれ。
きっと、あんたを幸せにしてくれるさ。
じゃあ、コンテスト会場でまた会おうぜ!」
「あ、あの…よろしければお名前を教えていただけませんか?」
「俺か?俺の名前はジュリアンだ。」
「ジュリアンさん…私は、ライラです。
本当にどうもありがとうございました!!」
店を出たジュリアンに、ライラはいつまでも手を振っていた。
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