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「う~ん、よく寝た…」
『よく寝たどころか、寝過ぎだ。
今、何時だと思ってるんだ.』
「うるせぇな。
別に用があるわけじゃないんだ。
ゆっくり寝たって良いじゃないか。」
『昨夜のレストランの娘はほっといて良いのか?』
「ライラのことか?
ほっとくも何も、今頃は彼氏と和解してるかもしれないぜ。」
『そう簡単にいくかな…
何ヶ月もかかって描いた絵がダメになったのだろう?
あの娘の彼氏は、すぐには立ち直れないんじゃないのか?
芸術家っていうのは、おまえとは違って繊細な神経の持ち主が多いからな。』
「…がさつで悪かったな。
ま、しかし、言われてみりゃその通りだな。
食事がてら、ライラに様子を聞いてみるよ。」
思いっきり伸びをしてベッドから起きあがったジュリアンが、顔を洗っている時だった。
「ジュリアンさん、いらっしゃいますか?
ジュリアンさん!!」
激しく扉を叩く音に、ジュリアンはあわてて扉を開いた。
「ジュリアンさん!!」
「ど、どうしたんだ、ライラ!」
「アルドーが…」
ライラは涙でくしゃくしゃになった顔でジュリアンを見つめ、白い封筒をジュリアンの前に差し出した。
「なんだい、これ?」
「読んで下さい…」
文字を追うジュリアンの表情が険しいものに変わっていく。
「大変だ!早速探さなきゃ!
どこか心当たりはないのか?」
ライラはただ首を振るだけだった。
「俺が必ず見つけて来るから、心配するな!
あんたは家で待ってな!
あ、そうだ、あんたの彼氏の特徴を教えてくれよ!」
ジュリアンはライラからアルドーの特徴を聞き、そのまま外に飛び出した。
『えらいことになったようだな。』
「畜生!こんなことなら昨夜のうちにアルドーに話をしておけば良かったぜ。」
『だから言っただろう…
芸術家の心は、おまえとは違って傷付きやすいんだ。
絵がぐちゃぐちゃになったことで、彼の心の中もぐちゃぐちゃになってしまったのだな。
早まった真似をしなけりゃ良いが…』
「は、早まった真似って、まさか…」
エレスは深く頷いた。
「ば、ば、ばっきゃろーーーー!
縁起でもないこと言うな!
い、いくらなんでも、そ、そ、そんなこと、するわけないだろっっ!」
口ではそう言いながらも、ジュリアンの脳裏には最悪の事態が思い描かれていた。
(死ぬなよ…アルドー!!)
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