愛の証明

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愛の証明

俺の名前は春野洋樹。東京の私立大学に通っている大学二年生だ。 昨年の春に東北から上京し、大学から二駅離れたアパートのワンルームを借りて、一人暮らしをしている。 駅前という非常に優れた立地なのだが、家賃は破格の安値だ。というのも、俺が住んでいる部屋は所謂曰く付き物件なのだ。一昨年に前の住人が首を吊って自殺したらしい。 しかし、ただでさえ私立の大学に通っていて、親にこれ以上経済的な負担をかけさせられないのでこの部屋で暮らしている。 本が好きな俺は文芸サークルに所属している。部員は男四人女四人の計八人とやや少なめだ。活動内容はおすすめの本を持ち寄って回し読みし、それらについて論評を交わすというものだ。 自ら本を書いているという人はおらず、なんなら本の話をしている時間より、まったり雑談をしている時間の方が多い。非常に緩いサークルだが、俺はむしろそんな雰囲気を気に入っている。 今日もこうして、朝で講義を終えた俺を含めた数人が部室でお菓子をつまみながら雑談を交わしている。
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