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パッと目が覚める。上半身だけを起こし、キョロキョロと周りを見渡すと、自分がソファで寝ていたことに気づいた。まだ頭がボーッとしており、なぜだろうと思った。しばらく考えてから、昨日あったことを全て思い出した。
そうか、昨日この部屋に黒川先輩が来たのか。そう思うと、なんだか感慨深いと思った。
ふと今は何時だと思った。昨日の夜はまたスマホの目覚まし機能をかけずに寝たので、もしかしたらとんでもない時間になっているかもしれないと思ったからだ。
慌ててスマホを探そうと、布団から足を出そうとしたが、その瞬間自分のポケットにスマホが入っていることに気づいた。その体勢のまま、ポケットからスマホを取り出した。
時刻を見ると、七時四十分。俺はほっと胸を撫で下ろした。いつも起きている時刻とほとんど同じだった。いつも家を出ている時刻は八時二十分。余裕で間に合う。
俺は顔を洗おうと思い、布団から出て、洗面所へ向かった。俺は顔を洗いながら何か違和感を覚えていた。すぐにその正体が分かった。布団をかけて寝ていたことだ。
俺は昨日、あまりの眠さに、黒川先輩を見送った後、部屋に入るや否やソファに飛び込んで寝たはずだ。それなのに朝起きたら俺の体の上には布団があった。
ちなみに俺は地べたで寝る方が好きなので、部屋にベッドは無く、いつも敷布団を敷いて寝ている。
昨日の夜は梅雨前の今の時期にしては、結構寒かった。だから夜中に寝ぼけて布団を取ったのだろう。それしか無いと思い込むことにし、俺は考えるのを止めた。
相変わらず身体中に刺さる視線を少し気にしながらも、手早く朝の支度を終わらせた。家を出て大学へ向かう。
電車の中で、俺は午後の黒川先輩とのデートのことを考えていた。映画を見るとは言っていたが、何の映画かは言っていなかった。何を見たいかを聞かれるかもしれないので、今上映している作品をチェックしておこうと思った。
スマホで調べていると、LINEの通知が来た。小林からだった。俺は画面上部のバナーをタッチし、LINEを開く。
内容は「先輩、今日講義午前だけですよね。終わったらすぐ部室に来てください。お話があります」というものだった。
俺は黒川先輩とのデートがあるので断ろうかとも思ったのだが、珍しく絵文字や顔文字などが無い真剣味を感じる文章だったので、承諾することにした。俺の講義時間を把握しているあたりが相変わらずの怖いところではあるのだが。
それに集合時間も場所も黒川先輩とのものと同じなので、その場ですぐ黒川先輩への説明と待ってもらうお願いができるのでちょうどいいと思った。
俺は「了解」と小林に返信をし、再び上映中の映画を調べ始めた。
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