愛の証明

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「相変わらずべったりだねー、羨ましいよー、洋樹は」 原田はこちらをニヤニヤ見ながら言ってくる。人の気も知らないで呑気なやつだ。 俺はチラリと黒川先輩を見る。どうやらいつの間にかスマホをいじり始めていたようだ。 俺は落胆する。先輩違うんです!こいつが一方的にくっついてきてるだけなんです!俺が好きなのは黒川先輩なんです! そう言って弁明したかったが、できない。小林を理由にしているが、普通に俺は先輩に嫌われるのが怖く、想いを伝えることができないのだ。 「ねぇ、春野先輩」 小林はまた俺の腕にしがみついてくる。そして上目遣いで話しかけてくる。 「先輩はいつになったら私と付き合ってくれるんですか?」 小林が突拍子もないことを言ってくる。だが今に始まった話ではない。これまで何度も告白はされているのだ。 俺は目を逸らして軽く無視する。すると、小林は俺の顔を掴んで捻り、自分の目と俺の目を合わせる。 「私と付き合ってくださいよ!」 まっすぐな目で言ってくる。もう逃げられない。俺はもう一度チラリと黒川先輩を見る。一瞬目が合ったがすぐに逸らされた。 「付き合っちゃいなよ付き合っちゃいなよ〜」 原田は面白がって囃し立ててくる。俺は絶対後で原田をボコボコにしてやることを心の中で誓った。 「いや、ごめん、それは…できない」 俺はやんわりと断る。小林の手が俺の頬から離れ、小林は少し俯く。 「先輩、好きな人がいるんですか?」 小林は俯いたまま小さな声で言う。確信をつかれた俺は少したじろぐ。 「いや、いないけど…」 俺は嘘をつく。俺は黒川先輩の前ではもちろん、それ以外でも先輩に知れ渡るのが怖くて好きなことは誰にも言っていないのだ。 「じゃーどうしてですか!?私の先輩への愛の証明がまだ足りないと言うのですか!?」 「んー、あ、うん。そうだなー」 だから俺は毎回こうして生返事をして切り抜けているのだ。正直申し訳ないとは思うのだが。 「そうですか、分かりましたよ」 小林はムッとした顔で自分の椅子に座り直した。 俺はまた黒川先輩の方を見る。今度は原田と楽しそうに話していた。 (先輩は、目の前でこんなことが起こっているのに、なぜ少しも動じないのだろう。俺のことなどどうにも思っていないのだろうか) 俺はモヤモヤしながらそんなことを考えていた。
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