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リミットは既に過ぎていた。
自覚しながらも、気付かないふりをして操縦桿を握るBを傍目で見つめる。
Aは大きく溜め息をついた。
嫌味だっただろうか、とすぐに後悔すると、おや、と眉をあげて話しかけてきたのはCの方だった。
「どうした、A。腹の調子でも悪いのか」
気の抜けた質問を投げかけられ、Aはまたしても溜め息をつく。
呆れて、逆に深く呼吸することになり、Aはふぅとリラックスできた。
(……いや、呼吸してる場合じゃなかった!)
今ここにあるもので限界なのに、と操縦席モニターに表示されている残数を確認する。
とたんに、Aの穏やかな顔立ちが眉根から崩れる。
絶体絶命だ、と音もなく呟いた。
が、その声は無情にも厳重に密閉されたコックピット内で雲散霧消した。
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