無自覚な恋情

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「すまない! ホームルームが長引いちまって……遅くなった!」  見れば、斉天大聖・源真夏が息咳切らしながら慌てたように駆け寄ってきた。 「もう……帰っちまったかと思った……。間に合って良かった……!」  ゼィゼィと荒い吐息を押さえながら微笑む。余程慌てて走ってきたのか、普段はクールそのものの彼が焦燥感いっぱいといった調子で、今日は別人のようだ。こんなに余裕のない様子は見たことがない。  秋夜は無論のこと、仲間内の誰もが同じことを思ったようで、大きく肩をならしながら呼吸を整える彼を不思議顔で見つめていた。  まるで地獄から一気に天国へと登ったような安堵感――ホッとしたなんていう言葉では到底言い表せないほどの気持ちの揺れが瞬時に秋夜を包み込む。戸惑いを通り越して無心にさせられてしまう。  本当だったら、『そんなに慌てることねえのに』とか、『用がある時は送迎なんて気にすんな』とか、何でもいい。何かひと言相槌を返そうにも言葉さえ上手くは出てこなかった。  やっとの思いで我に返り、秋夜はボソリと呟いた。
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