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「そんじゃ、また明日な」
耳元に飛び込んできたその言葉で、もう家に着いたことを知る。
「今日は遅れちまってすまなかった」
はにかむような笑顔と共にそう言われて、ドキりと胸が鳴った。
「……べ、別に……構わねえ。つか、毎日の送り迎えなんて必要ねえしよ……。てめえにもいろいろ都合ってモンがあるだろうが」
「俺が好きでやってることだ。お前にゃ迷惑なことかも知れねえが――」
「別に……迷惑なんて思っちゃねえけど……よ」
「そうか。だったら良かった」
またもや少々はにかんだ笑顔を見せられて頬が熱を持つ。この気持ちがいったい何なのか、分からないほど秋夜は子供ではない。
この男の前に出ると、どうしてかひねくれた態度になってしまう。ドキドキと心臓が脈を打っては逸り出す。もうごまかし切れない。これを恋といわずに何といおうか――まさに恋情以外の何ものでもなかった。
だが、素直にそれを認めてしまうことができずにいるのもこれまた事実であった。
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