無自覚な恋情

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 夜半になっても雨は降り続き、一向に止む気配をみせずにいる。ベッドへと潜り込んでも、秋夜はなかなか寝付けずにいた。 「風邪……引いてなきゃいいけどな」  あの後、彼はどうしただろう。せめても無事に着いたと、ひと言でいい。言葉を交したかった。 「ま、無理か――携番さえ知らねんだしな」  そもそも桃陵と四天の番格対決という経緯がなければ、接点さえない間柄だ。彼が毎日校門の前で待っているというのも、勝負に負けたからという理由があればこそで本来は有り得ないことなのだ。 「……何、やってるんだかな、俺も――」  あの男は今頃何をしているだろうか。何を考え、何を見、何を思っているのだろう。うるさいほどのこの雨音を、彼も同じように聞いているのだろうか。そして、よもわくば彼も自分のことを考えてくれていたりすることもあるのだろうか。  秋夜は布団の中で身を丸めながら、指先で自らの唇をなぞっていた。 『無理強いするつもりはねえ。一年掛けて、もしもお前がその気になってくれたら……お前自身を俺にくれ』  あの春の日の告白と――ほんの軽く触れただけのキスが胸を焦がす。
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