無自覚な恋情

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 次の日の朝は昨夜の雨が嘘のように快晴となった。蒸し暑さが夏の訪れを感じさせる季節の到来だ。きっと今日も放課後になれば、あの源真夏が校門の前で待っているのだろう。眩しいほどの夕陽の中、肩を並べて帰ることができるのだ。それを思うと何だか心が躍るようで、自然とたゆたう笑みが頬をゆるませる。  そんな秋夜を驚かせたのは、玄関を出たところで待っていた源真夏の姿だった。 「――はよ!」 「……ッ! 源……てめ、何で……」  これまで真夏は下校時の護衛に来るだけで、朝の登校の際には迎えになど来たことがなかった。だから秋夜はその姿を見るなりめっぽう驚かされてしまったわけだ。 「これを返そうと思ってな。昨日はホントに助かった」  傘を手に、はにかんだ笑顔でそう言った。少し照れたような独特のその笑顔が秋夜の胸を瞬時に高鳴らせる。
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