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「秋夜……だって……。い、いきなり呼び捨てとかよ……ビビらせやがって……! 誰が許可したってよ!」
憎まれ口を叩きながらも躍る心は止めどない。思い切りベッドにダイブしながら枕を抱き締めて、変な奇声まで発してしまいそうだった。
そういえば『おやすみ』なんて言い合ったのはいつ以来だろうか。近頃では両親にすらそんな台詞を言ったことがないことに気付かされる。
「秋夜……かぁ……。もっと……もっと呼べよ……」
そう、あの少し低いトーンの色気を帯びた声で何度でも呼ばれたい。
「……クッソ……! 真……夏……。真夏……真夏……真夏ー! おやすみなぁ、真夏!」
バタバタと足で布団を蹴り、枕を抱き締めたままゴロゴロとベッド上で悶えまくる。
「うっひゃー……真夏……! 愛してるぜー! なーんつってな」
普段なら絶対に有り得ないだろう、ガラにもない言葉が素直に口をついて出る。冷めやらぬ興奮と満面の笑みが秋夜を包み込み――真夏へと向かう幸せな夜が更けようとしていた。
- FIN -
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