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ジャーン、と最後の一音が止まって訪れる静寂。そしてすぐに歓声が体育館を包み込む。目の前のお客さんたちは皆笑顔で、私達を讃えてくれていた。このステージに何度立とうとも、この瞬間が好きだという気持ちが色褪せることはない。達成感が私の心を満たしてくれるこの瞬間が、私は大好きだ。
でもそれも今日で終わり。荒々しく響く自分の呼吸音が自分の限界を嫌でも悟らせる。歪む視界、立っているのもやっと。だけど、まだステージは終わっていない。幕が完全に閉まるまで、私はこのバンドのボーカルであり続けるのだ。
「みんな、本当に、ありがとう……!」
そう叫んだのと同時に幕が閉まった。不意に訪れる脱力感。暗くなる視界。耐え切れず私の体は床に崩れ落ちた。
___もっと、歌いたかったな。
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