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それから、私は全てを打ち明けた。重い病気を患っていて、一曲歌うだけでもかなり体力を使うこと。その病気は不治の病で、この学園祭が最後のステージになること。そして____もうすぐ死ぬということ。事情を知っていた翠が泣き止んで色々と補足(自分も病気のことは知っていて、黙っていたことなど)を話してくれた。
3人とも最後まで黙って話を聞いてくれた。その後は予想していた通り、黄月は学園祭への参加を辞めると言い出すし、紫音もそれに賛成だった。翠が反論しようとしてくれたが、その前に緋奈乃が「出よう」と言ったのは意外だった。緋奈乃のことだから参加は辞めようって言うと思ったけれど、
「私は蒼とステージに立ちたい。……本当はね、知ってたんだ。病気のこと。だからこの学園祭が一緒に演奏できる最後のステージなんだって覚悟はしてた。でも……いざ本人から全部聞くと、やっぱり涙が止まらない。きっと蒼が病気のこと医者に言われた時も、こんな気持ちだったんだよね。ずっと一緒にいたのに気付いてあげられなくてごめん。黙っていてごめん。学園祭に出ることが蒼の最後の願いなら、私たちはそれを叶えてあげる義務がある。今まで何もできなかった分、最後くらい、出来ることはなんでもやってあげたい。」
緋奈乃曰く、職員室に行ったときにたまたま聞いてしまったらしい。担任に検査結果を話した時だろう。
緋奈乃の説得に紫音も黄月も納得して、絶対に無理をしないということを条件に学園祭に出ることを決めた。そこからの1週間の練習はみんな今まで通りに接してくれて、ずっとこの時間が続けばいいのにって思った。
そして、学園祭当日。私たちはステージに立った。
体調は決して万全とは言えなかったけれど、それでも、私たちは全力で叫んだ。これは私たちの、未来について[Re:futures]の歌。私たちはここにいるよ、って。
曲が終わるたびに肩で息をするような状態。最後の曲の前には観客席にいる泣きそうな顔をした担任と目が合い、苦しさでいっぱいになった。先生にもいっぱい迷惑かけました。本当にごめんなさい。でも、あと一曲だけ、私の”最後の”我儘を聞いてください。
「___次で最後の曲になります。ここまで応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました。私たちRe:futuresはこれからもずっと、皆さんのために、歌い続けます。……支えてくれた翠、緋奈乃、黄月、紫音もありがとう、こんな私の我儘に付き合ってくれて。」
「それでは聞いてください。『StaRt』」
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