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「ねぇ、少し話さない?」
女は僕が動かないよう拳銃と顔ををこちらに向けたままダイニングルームの椅子に座った。身体を前のめりにしたあと、クリーム色のテーブルに手を載せ、指先で軽く叩く。僕は彼女の言う通りにした。
座る途中で彼女の足下に母親の足らしきものが見えた。
「あなた、サトルくんよね?ここの養子の」
「はい」
「私が何者か分かる?」
「…殺し屋…?」
女が微かに笑った。もともと並外れて美しい彼女だが、氷柱のような冷たい印象のせいで僕の趣味からは外れていた。が、彼女の笑顔を見た瞬間、体温が急激に上昇するのを感じた。
「なんでこうなってるか分かる?」
「…それは…」
先程帰宅したばかりだ。詳しいことは分からない。が、恐らく父のよろしくない交遊関係が原因なのだろう。でもそれがどう関わってくるんだ。僕は頭を巡らせ、無難な解答を選んだ。
「…父が仕事に失敗したから…?」
突然花火のような音がなり、左肩が急激に熱くなった。見ると紺色のジャケットに黒い空洞ができ、そこから液体のようなものが染みている。撃たれたんだなと呑気に思った。
興味が彼女に集中しているせいか、痛みはそれほど感じなかった。
「はずれ。君のお父さん、うちのお金に手を出しちゃってね。ボスが怒ってるのよ」
僕はため息を吐いた。
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