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「見てよハルカ!あそこに、いかにも強そうなドラゴンが居るよ!」
大草原のど真ん中。朝露に濡れて青々とした草木に包まれながら、ヒナノが言う。ハルカは、そんなヒナノの視線の先に目を凝らした。
「ドラゴン…?珍しいな。いち早く討伐に行くか」
「うーん、多分ギルドで討伐依頼クエストがあると思うよ。そのクエストを受注してからじゃないと…」
「いいや、倒してからでもギルドに行けば報酬はもらえるだろ。何とかなるさ、早く倒しに行こう」
「…ふふ、ハルカは相変わらず戦い好きだね」
ヒナノがふんわりと微笑む。それには答えず、ハルカは生い茂る雑草をかき分けて、少し遠くに出現している巨大ドラゴンの元へと黙々と歩き出した。ヒナノはそんなハルカをじっと見つめる。
「…素敵。戦いのためには、ひたすらに真っ直ぐなところ…。眼中には、倒すべき敵しかない…まさに戦闘狂だね」
ヒナノは、密かにハルカに恋心を抱いていた。鈍感なハルカは気づく訳もないが、度々大胆な事を言うこともある。今のように、「素敵」だとか。まあ、ハルカがそれを気にするはずもないが。
元々、2人が知り合うきっかけになったのは、ハルカがヒナノに話しかけたからである。ヒナノはそれだけでも少々ドキリとしたものだが、ハルカがヒナノに対して持つ興味というものは、異性としてのものではなく戦いに関する興味であった。職業、レベル、装備。強い仲間を参考にしたかったハルカは、たまたま近くにいたヒナノが気になって声をかけたのだ。
ヒナノはハルカと比べて強くはなかったものの、余りにも共通点が多いため自然と一緒に行動することが増えたのだが。
「ハルカは…戦いのことばっかり。たまには、私のことも見てよね…」
ヒナノの呟きは、ハルカには届かなかった。
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