筆箱

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小学校入学前に、娘は筆箱を買った。 お揃いの鉛筆も買ってとても嬉しそうだ。 「ママ、だいじにするね。ありがとう」 しばらくすると、すぐに壊れた。 本体と蓋の接続部分が破れてきたのだ。 安かったし、ビニール質だし、仕方ないな、今度、新しいのを買ってあげないと…私は思っていた。 忙しさのあまり、筆箱の事をすっかり忘れていた。 「よし、できた!」 娘は梱包用テープで接続部分を修理していた。 新しいのを買ってあげようと思っていた私は驚いた。何でも安く買える今の時代「安いし買ったらいいや」そう思っているのは、私達、親世代なのかもしれない。娘には話せなかったが、すぐに新しい筆箱を買おうと思った自分の思いを恥じた。 その後も、何度か梱包テープで修理していた。 何度も修理しながら大切に使っていた。 買って欲しいとは言わなかった。 もう、修理も限界だな…そう思った私が 「今度新しいのを買おうか」娘に声をかけた。 「うん」娘は答えた。 2人で近所のショッピングセンターに行った。どれがいいかなー、沢山あって悩んでいると、娘が叫んだ。 「ママ、これがいい。ゾウがのってもこわれないってかいてあるよ」 そこには確かに、象が乗っても壊れないと宣伝されたプラスチックの筆箱があった。 「これで、こわれないね。6ねんせいまでつかえるね」 娘はニコニコしながらピンクのプラスチックの筆箱を手にとった。 娘は今でもその筆箱を使っている。 側面には平仮名で名前が書いてある。 高学年でピンクは少し幼い感じもする。平仮名の文字は、さらに幼さを強調する。それでも、今でも、娘は大事に使っている。 周りのお友達も特に何も言わないようだ。 物を大切にしよう…久しぶりに思い出した感覚だった。断捨離を否定するつもりは全くないけど、思いを込めて購入し、物は最後まで大切にしていきたい。そう思った。気づかせてくれた娘に感謝した。 ピンクの筆箱、大事に使い続けたい。
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