せめてもう一度だけ

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せめてもう一度だけ

からん 私は、昔ながらの喫茶店の扉をそっと開いた。 「いらっしゃいませ」 20代半ばくらいの男性が、声をかける。 さらさらの髪が目が隠れそうなほど伸びているが、 ベストに蝶ネクタイが似合う、美少年だ。 椅子が4脚並んだカウンターと、4人掛けのテーブル席が4つ。 小さな喫茶店には幸い他に客はいなかった。 少し迷って壁を背にして座れるテーブル席につく。 そして男性がオーダーを取りに来たタイミングで、 おずおずと声をかけた。 「あの!」 「・・はい?」 男性はこのやり取りだけで、私がただコーヒーを飲みに入ってきた訳ではないことを悟ったのだと思った。 顔つきが、厳しくなった。 少しひるんだが、言葉を絞り出す。 「写真を、写真を撮っていただけないでしょうか」
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