せめてもう一度だけ

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「!」 画面いっぱいのまばゆい光の中、大きな白い羽を広げた天使が、 こちらに向かって微笑んでいた。 「さあ、カメラを持っていてください。落とさないで。 今から魂が僕に憑依します。 どれくらいの時間僕が持ちこたえられるかは分からない。 でも、精一杯、努力します。 最後のチャンスです。どうぞ心残りのないように」 男性はそう言い置くと、ふっと目を閉じた。 そして 「ママ・・・」 目を開けると、私に向かってそう呼び掛けた。 「・・・・!」 私も呼び掛けようと思ったが声がでなかった。 出るのは涙と嗚咽ばかりだ。 「ママ、僕を呼んでくれてありがとう。 ママにね、伝えたいこと、いっぱいあったんだ。 人間の時はまだ小さかったから、言葉もあまり知らなくて、 伝えたいのに伝えることができなくて・・・。 まずね、僕のお母さんになってくれてありがとう。 僕を産んでくれてありがとう。 お母さんのおかげで僕は人間として生きることができたんだよ。」
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