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「子供・・・なんです。先日亡くなった・・・」
わずかに男性の視線がゆるんだ、、気がした。
見つめられ静かに問われた。
「子供さんの写真を、ですか」
断られることの方が多いという噂を聞いていた。
あまりに静かに問われたので、断るつもりなのかもしれないと思った。
「はい!どうしてもどうしても今、どうしているのか知りたいんです!」
涙をこらえ言葉を絞り出し続ける。
「先日亡くなった子供はまだ、4歳でした。生まれてすぐに脳に腫瘍が見つかって・・・一度は治療で回復しましたが、半年で再発して、
それからはずっとつらい闘病生活の毎日でした。」
「そんななかでも、あの子はいつも幸せを私たちにくれました」
「私たちが悲しまないよう笑顔をたくさん見せてくれた。
元気になったら私が喜ぶからとつらい治療に耐え、がんばる姿をみせてくれた。」
「小さな体で精一杯生きていました」
「そんなあの子に私は何も返してやることができなかったんです。
私はいつも悲しい気持ちでいっぱいでした。
つらいばかりの人生だったあの子になにも喜びをあげることが
できなかった。」
「あの子が亡くなってから、どうしてもそれが心残りで。
あの子はつらい中いつも私たちが悲しまないようにと考えてくれていた。
それなのに私は自分の悲しみばかりで、
あの子に喜びをあたえることを考えることができなかったんです」
「なので今は楽しく過ごせているか、幸せなのか知りたいんです。
もし今も苦しんでいるのだったら、どんな手段を使ってでも
供養をしていきたい。せめてあちらでは幸せに過ごしてほしいんです。
お願いします!」
私はそこまで一気に言い終えると、頭を下げた。
こらえたはずだった涙は、スカートにポタポタとシミを作った。
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