せめてもう一度だけ

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男性はしばし沈黙した後、口を開いた。 「写真を撮るにあたり、注意点がございます。 それを聞いても希望されるのであれば・・・この度は承りましょう」 「あ、ありがとうございます!」 私は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を素早くティッシュでふき取り、 鼻をかみ、彼の言葉を一言も聞き漏らすまい、とじっと目を見つめた。 「まず、ご存じのようですが僕は確かに死者の写真を撮ることができます。 ですが、それは魂がこの店に入ってきた場合に限ります」 「魂は生前親しかった人の呼びかけに応えて、この店にやってきます。 魂がこちらからの呼びかけに応えなかった場合は、写真は撮れません。 まあこの点は、今回は大丈夫だと思われます。」 「次に、魂は犯した罪の数によって重さが変わってきます。 つまり重い魂は地獄へ、軽い魂は天国へ、中くらいの魂はレベルに応じた 中くらいのあの世へ行く、と思ってください」 「はい」 「この店にはある種の結解が張ってあります。 結解がないと悪しき魂もバンバン入ってきてしまうためです。 ここに入ってきた魂は、僕に憑依することで会話をすることができるように なります。 力の強い悪しき魂に憑依され、僕の魂が乗っ取られたら、僕は死に、 僕を乗っ取った魂がどんな悪さをするかわからない。 そのため、強い結解が張ってあり、 ある程度清められた魂しか入って来られません。 子供さんの魂が結解にはじかれた場合は、子供さんはこの喫茶店の前までしか来ることができません。中にあなたがいるのが分かっているのに会うことができない。」 ここのことは事前にかなり調査をしたため、今聞いたことはすでに 知っていることばかりだった。 問題はない。 「それは大丈夫だと思います。ほんとにほんとに優しい子供だったんです!」 あの子の魂が罪で重いことなどあろうはずがない。
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