せめてもう一度だけ

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「魂の罪の重さは今生だけで決まるものではないんです。 例えば・・・ですが、前世で多くの罪を重ねた魂が悔い改める時、 特につらい人生を選んで生まれてくることがある。 そういう場合は・・・優しいとかいい人、とかでは魂の重さを推し量ることはできない。いやどのような場合でも魂の重さを人間に推し量ることなど、できるものではありません」 「・・・」 男性はわたしの表情を確認してから先を続けた。 「もし、呼び出した魂がここに入れなかった時は、 子供さんの魂はさみしい思いをすることになる。それが引き金になって 現世への執着となり、あの世へ帰らずそのまま浮遊霊となることもあります。」 「そんな・・」 罪で重くなった魂は、あちらの世界で重さの程度に応じた修業を積み、 少しずつ穢れを払い、魂を軽くしていくのだという。 私がここへ呼び出すことで、あちらの世界での修行の機会をなくさせてしまう こともあり得るというのだ。 男性の言うことが理解できてきた私は、ギュッと唇をかんだ。 私の自己満足のために、あの子に迷惑をかける訳にはいかない。 だけど・・・ここへ入って来られないということは、あちらでも つらい思いをしているということじゃないだろうか。 生きている間は、毎日が苦行ともいえる日々だったというのに・・・ あちらの世界でもなお修行をしているかもしれないというのだろうか。
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