現代むかし話1 ヘンゼルとグレーテル

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「ところで、焼くときにふくらまし粉として使われる重曹、まあこれは炭酸水素ナトリウムですが、これが熱反応によって生地を膨らませる二酸化炭素のほかに炭酸ナトリウムと水に分解するとき、この残留した炭酸ナトリウムの苦みが気になることはありませんか? それとも、これを中和する酸性剤と一包式になっているベーキングパウダーを使われていますか?」 老婆はテーブルに肘をつき、組んだ指を額に押し当て少し押し黙ると、答えました。 「・・・・・・そうさね。ほかに蜂蜜やチョコレートなんかの酸性の材料が入ってる場合はそれで中和されるから問題ないし、焼く時間が短いので熱反応の時間も短いクッキーやパンケーキなんかはそんなに分解反応もしないから重曹でもよかろう。 ただ、そうでないマフィンやビスケットなんかは、中和剤の混ざったふくらまし粉を使ったほうがいいかもしれないね。」 普段インテリぶって一般人に知識をひけらかしたりはしないヘンゼルが、お菓子作りの化学について突っ込んだ質問をしたことに、そして老婆がそれに受け答えしていることにグレーテルはおどろきました。
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