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ヤンキーのやり方やん
『よう、長尾景虎だ。いや上杉謙信かな?今度改名しようと思ってるんだよ、格好良いだろう?まぁいい。越後が騒がしいのは耳に入っているな?なんでか知らないけど俺の国で反乱が起きてるんだよ、結構手強くてな。助力が欲しい。奥州に今いんのは調べがついてるから、ちょろっと来て手伝ってくれ逃げるなよ?』
手紙の中身はこんな感じだった。
「拒否権が...拒否権が無いよハンゾー。」
「あちゃ〜越後守殿からかぁ、押しが強い人だからなぁ。ま、諦めて行けば?」
は?他人事だと思ってんの?
「お前も来るんだよぉ?」
「僕は行けないよ!この前間者騒ぎもあって大変だったんだ、それに奥州全体がなんだかきな臭い。僕がここで抜ける愚を犯すわけにはいかないな。」
「そうか....なんとかならない?」
「ならない、息子はまだ小さいしな。」
伊達輝宗の息子である梵天丸はまだ3歳の幼児である、幼いうちに父が死んだしまった後の子供は悲惨な目に合う。
家臣に権力を奪われたり、下手をすれば下克上に合い死だ。
徳川家康や、織田信長の後継の三法師もその辺りは苦労しているからな。その辺りを良く知っているハンゾーとすれば今一番大事なのは自分の命だろう。
ま、それなら仕方ないか...
正直、もう東北に永住したいぐらいなのだが友人に無条件で世話になるのはなんだか引け目を感じて嫌になるところだ。なんだか駄目人間になったような気がしてしまう、やっぱり今川に一回帰らないと駄目だな...
今川に戻る、なるほど選択肢としてはアリだな。
問題としてはまた仕事をしなければいけないと言う点だな、うんヤダ!
「それにしても、私が必要ってどういうことだよ。猫の手でも借りたいってか?」
「桃ちゃん、指揮能力が高いってのは聞いたことが無いんだけど...勉強したの?」
「いや、私戦場に出たことも無いんだが?」
「え、本当?噂とは随分違うような....」
「あまり聞きたく無いけどどんな噂だ?」
「え、武芸百般、常勝不敗、慈悲深く名実共に今川義元公の天下を支えた大黒柱....」
「それ以上は良い。」
少し憂鬱な気持ちになった、なが...謙信殿からそうした文が来てるのもそういう訳だろう。
行きたくない。
だが、行かねばもっと面倒くさいことが待っている。それは当然のことだ。
戦国大名って結局なんなの?
そう聞かれるとハンゾー曰く『ヤクザ』らしい、米を奪い合い、領地を奪い合うその様はまさしく戦国ヤクザに相応しいだろう。
勿論、天下に名を轟かせている上杉謙信もその例に漏れることは無い。誘いを断る、もしくは無視すればどうなるだろうか?
『おう、あの時はよくも俺の誘いを断ったなゴラァ』
報復、つまり死が待っている。
死にたく無い....行きたくない....
「雪解けを待ち出発する、幸村、慶次、そのつもりでいよ。」
諦めた。
「「はっ」」
慶次も幸村も嬉しそうにそう答える、幸村は特に目を輝かせていた。
幸村は初陣か、鎧を昌幸殿に送って貰わねばなるまい。
慶次も武者働きを見るのは初めてになるかも知れない、まぁ慶次は心配無いだろう。
「武運を、あと、たまには遊びにおいでよ?」
「約束する!と言うか永住したい!お菓子用意しとけよ!」
勿論だ、また話をしよう!
「心と言葉が真逆になっちゃってるよ、桃ちゃん!」
◇◇◇◇
『戦』
一般的な戦で起きる死者とは何人ぐらいなのだろうか?
規模にもよるが長篠の戦いでの死者は武田軍が1万ぐらいに対し織田軍は60ほどだったとされる。
規模は諸説あるが織田軍は3万、武田軍が1万5千ぐらいと考えると武田軍がどれだけの大損害を受けたかがわかるだろう。
他にも耳川の戦いと言う大友家と島津家の戦では大友が壊滅に近い形までやられたとされており、3万から4万ほどいた大友が壊滅した。
ここでもそんな、血を血で洗う戦が起きていた。
上杉勢2万、一揆勢3万の戦いである。
数こそ一揆勢が上であるが、一揆勢とはつまり百姓の集団だ。
馬鹿にして良い相手では勿論無いが、しかし武士よりも強いわけでは無い。まぁ上杉も百姓より兵の招集をしていることも多いがそれはそれだ。
1兵の強さ比べは言うまでも無いだろう。
「殿ーーーーっ!」
ガシャガシャと煩い音をたて、全身鎧を着た伝令の男が陣中に入ってくる。
陣中は、上杉の家紋に囲まれており、左右に家臣が座っている。
その中央に座るのは、某超大型ロボットを思わせる大男だった。
人間的であって、人間的で無いその顔は真顔のままピクリともその表情を動かさない。
今川輝宗の持つ波立たぬ静けさのような覇気 (何もないだけ)や、伊達輝宗の持つ戦国大名らしい威圧感とはまた違う。
ただそこにいるだけで、緊張感が生まれる。
そんな神仏にも似た気配を漂わせるこの男こそ、上杉謙信。
軍神と恐れられる男である。
「先陣の柿崎勢、優勢!勢いのままに一揆勢を押しておりまする!」
途端に、おおという声が左右にいる家臣たちから上がる。
もうすぐ冬になる、そうなると軍を退かなければならない。
一揆勢との戦いもそれなりに長い、ここで決めておきたいと言うのが家臣一同の偽らざる本音であった。
事実、ここで終わりそうだという思いもある。それを理由に左右共に上杉勢が優勢であった。
だが、上杉謙信が出す指示はそうした家臣の思いとは逆のものであった。
「少し軍を退かせろ、罠の可能性がある。」
「殿!奴等は民兵ですぞ、策を弄するような軍師がいる筈もありませぬ。」
「左様、それに民兵に撤退するふりなどできる筈がありませぬ。指揮をしておられるのは上杉勢でも猛将の聞こえ高い柿崎殿、見誤る筈も無いかと。」
わざと負けて敵をおびき寄せる、物語ではありがちな戦略だ。
だが待ち伏せと言うのはそれなりの技量を持たないとできないのだ、撤退をする際に不自然に見えないようにする技量、それは将だけでなく兵士にもそれは求められる。
要するに役者になりきれるかどうかと言う話でもある。
家臣が強気に出る理由のもう1つに、先陣が柿崎影家であるということも入っている。
柿崎和泉守影家、上杉の筆頭家臣であり勇将揃いの上杉軍でも屈指の戦上手でもある。
上杉軍の戦いでは常に先鋒を務め、その名を聞いただけで敵は逃げ出したともされている。
そんな彼を、謙信も、そして家臣も全幅の信頼を寄せていた。
しかし、謙信の意見はまたも異なる。
「馬鹿者が、あの一揆勢の全員が策を知る必要もあるまい。」
「ま、まさか指揮官クラスすら知らない待ち伏せなどあるのですか?」
「ある、奴等のほぼ全員...いやあの女以外の全てが戦に負け撤退していると本当に信じ込んでいたら?」
家臣の全員が黙った、無い、などとどうして言えるだろうか。同じような手口で何度も上杉は苦渋を飲まされていると言うのに。
「使番を出せ、退かせよ。」
それは、滞りなく実行された。
一見、勝利したかのように見えた戦。にも関わらず敵に大した損害を与えられなかったこの戦に、先陣を務めた柿崎も苦言を呈したと言われている。
次の瞬間まではーー
上杉謙信が撤退の指示を出してから30分と経たなかったであろう、視界が、白転した。
それを直視していた彼らの視界が白く染まった後、感じたのは地響きだ。
立っていられない程の衝撃に柿崎隊の面々は座り始める。
上杉の本陣からも、それは見えていた。
「おお....」
「あれは....なんと言う...」
破壊、土埃が出て来るその瞬間まで出ていたその白い発光は見るものの心を奪い動機を激しいものへと変化させる。
神仏の類を見たことが無く、信じてもいないものがそれを見ればまさしくそれは神の御技と思い込むであろう。
そんな、神仏の偉業を見てなお、上杉謙信の表情は変わらない。
「使番を、全軍撤退だ。これでは馬が使い物にならん。」
上杉勢と、一揆勢。
両者の戦いは冬開けへと持ち越され、あの白い光を一揆勢は我らが頭領の仏からの御技と吹聴しその数は更に増えていった。
そして、冬が開ける。
春となり、新しい季節を迎えた越後に、今川輝宗が上陸する!
◇◇◇◇
「は〜なにあれマジありえない!私の新兵器を勘だけで躱すとかどういうことよあこ野生生物が!」
「全く持って信じがたい、一度解剖してみたいわその頭!」
「一揆の奴等もどんどん増えて調子も良いし、この冬のうちに新兵器をガンガン創らないと!」
「負けないぞ...こんな変な世界でも千代ちゃんは笑顔で発明に取り組んでたまるかこんちくしょうがぁぁぁぁぁ!!」
「あークソ!もっと良い素材無いのかよもおおおおおおお!」
「あぁ!また千代姫が全裸になっておられるぞ!」
「YES、ロリータノータッチ。」
「お前それ何語だよ?」
「ん?千代様が教えてくれた言葉だぞ?」
「うん良くわからんが黙ってろ。」
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