2人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも、どうしようかな?脅かすのも痛めつけるのもダメだったし。」
桜井は考えた姿勢で立ち止まる。
「もう終わりにするか?時間も出来ることもないだろ?」
立川が言う。
「ただ、罰ゲームは受けてもらうけどな。」
「むぅ。」
桜井は考えていた顔から苦しい顔に変貌する。
それから桜井はあの手この手で立川を叫ばせるよう努めた。こしょばして笑わせようとしたり、挑発して怒らせようとした。それでも立川が叫ぶことはなく、無情にも時間だけが過ぎていった。
キーンコーンカーンコーン
授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。同時にゲーム終了、桜井の負けが決まった。立川は意気揚々とアイマスクを取る。
「よし、これでゲーム終了だな。」
立川が桜井に向けて言う。ただ、周囲に桜井の姿はなかった。
「ん?どこ行った?」
軽く周りを見渡しても桜井の影すらつかめない。探しているうちに教卓に置いたままにされていた罰ゲームの書かれた紙に目が留まった。
「…先に罰ゲームでも確認しとくか。」
立川は折られた紙を広げる。そこには5文字で書かれた罰ゲームの内容があった。
「…ケツバット?」
立川がその内容を読み上げる。
「さーくーらーいー。俺、既に罰ゲーム受けてるじゃねーか!」
立川が沸々と湧き上がる怒りを露わにする。状況を理解すると同時に、桜井が逃げたのだということに気が付く。教室から飛び出して左右に伸びる廊下を見渡す。遠くの方に桜井が逃げ走る様子が見えた。
「テメェー、待てコラー!」
立川が叫んで追いかける。
「コラー、廊下を走るなー。」
遠くで出目金先生の叫ぶ声が響いていた。
最初のコメントを投稿しよう!