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少年は倒れたままでいる浮浪者に駆け寄り、
「お腹減ってるの?
これあげる」
買ったばかりの小さな牛乳パックを差し出した。
浮浪者は力の入らない両手でなんとか踏ん張り、ゆっくりと上半身を起こして差し出された牛乳パックを受け取った。
「寛太、そんなところで何してるの!
早く戻ってきなさい」
少年の背後から母親らしき人物の声。
聞き取れないほどの声で小言を言われながら、小さな手を引っ張られ連れていかれる。
寛太は振り返って、
「じゃあね」
笑顔で浮浪者に手を振った。
浮浪者は白髪混じりの長いボロボロの髪を顔にまとわせつかせながら、
「ありがとう、ありがとう、ありがとう……」
涙を流して、何度も何度もお辞儀した。
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