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夕闇のコンビニ
「ない……ない……」
浮浪者はボソボソと呟きながら、コンビニのゴミ箱を漁っていた。
「次……」
一つ目のゴミ箱を諦め、二つ目のゴミ箱を漁り始めたところで、
「おい!何やってる!」
自動扉を開け、店員が詰め寄ってくる。
浮浪者は構わずに漁り続ける。
「またお前か!
ここにはお前にやる物なんか何もないんだよ!」
店員は浮浪者の肩を掴む。
浮浪者はそれを振り払って、三つ目のゴミ箱を漁り始める。
もう二週間もの間、口に何も入れていない。
「おい!聞いてるのか!」
店員は掴んでいた肩を思いっきり引っ張ると、浮浪者はヨロヨロと倒れた。
「今日こそは……絶対に……絶対に持って帰らなきゃ……」
店員の目線に負けじと立ち上がり、再び漁り始める。
「やめろっつってんだろ!」
店員は、もう何色かもわからないヨレヨレのコートの襟を掴んで後ろへ引っ張り、ゴミ箱から遥か遠くへと放り投げた。
大人の体とは思えないほど軽かった。
「二度と現れるな!」
店員は言葉を投げ捨て店の中へ。
入れ替わりに出てきたのは、まだ幼い少年だった。
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