43人が本棚に入れています
本棚に追加
「何言ってんの? こっちのプライバシーは関係ないって訳? 調べられるなら、こっちだって知る権利があるわ」
「そうですけど・・」
「じゃあ、こういうのはどう? あなたがいちいち調べなくても、私が全部教えてあげる。そのかわり、相手の事も話してちょうだい」
日岡は目を見開き、しばらく唸った。あらゆる手札をどの様に切っていくか考えているのだろう。しかし、千春自身、そう簡単に相手の都合よく話を進める気はなかった。
日岡は、深く迷い、中々答えを出さない。せっかちな千春は、別の案を出した。
「だったら、相手の事は言わなくていいから、これまでの流れを話して」
「えっとですねぇ・・・」
くよくよとはっきりしない様に、苛立ちが一気に募った。
「あのさ、何も答えないんだったら、この事バラすわよ」
「脅しですか?」
「何? 知られたいの? どうせ高いお金を貰ってるくせに、それでいいの?」
「わかりましたよ」
日岡は堪忍したようだ。
「で、依頼者は名前は?」
「ですから、そんなの言えませんよ」
「ここまで話したんだから、もういいでしょ?」
「約束が違いますよ」
「人のプライバシーをこそこそ盗み見してるあんたが何を言ってんの? 答えないと、これは返さないよ」
私が手に持つ依頼書を揺らすと、歯を食いしばって日岡は睨んできた。
最初のコメントを投稿しよう!