1 加藤千春

4/5
前へ
/101ページ
次へ
「何言ってんの? こっちのプライバシーは関係ないって訳? 調べられるなら、こっちだって知る権利があるわ」 「そうですけど・・」 「じゃあ、こういうのはどう? あなたがいちいち調べなくても、私が全部教えてあげる。そのかわり、相手の事も話してちょうだい」  日岡は目を見開き、しばらく唸った。あらゆる手札をどの様に切っていくか考えているのだろう。しかし、千春自身、そう簡単に相手の都合よく話を進める気はなかった。  日岡は、深く迷い、中々答えを出さない。せっかちな千春は、別の案を出した。 「だったら、相手の事は言わなくていいから、これまでの流れを話して」 「えっとですねぇ・・・」  くよくよとはっきりしない様に、苛立ちが一気に募った。 「あのさ、何も答えないんだったら、この事バラすわよ」 「脅しですか?」 「何? 知られたいの? どうせ高いお金を貰ってるくせに、それでいいの?」 「わかりましたよ」    日岡は堪忍したようだ。 「で、依頼者は名前は?」 「ですから、そんなの言えませんよ」  「ここまで話したんだから、もういいでしょ?」 「約束が違いますよ」 「人のプライバシーをこそこそ盗み見してるあんたが何を言ってんの? 答えないと、これは返さないよ」  私が手に持つ依頼書を揺らすと、歯を食いしばって日岡は睨んできた。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加