4 三上哲雄

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 悲しみを蒸し返す自分はどうかしていると思った。しかし、そんな内生を繰り返す自分を払いのけて、彼女に神経を注ぐように意識した。  由希子を見ていると、そこにはほんの僅かに、俺に知られたくない何かがあるのかもしれない。そんな気がしたからだ。俺は、その事実を知りたくて、ここまでやって来たのだ。 「友達」  しばらく間を開けて、さらに細い声で由希子は答えた。 「友達が亡くなったの」 「俺の知っている人?」 「あなたは知らないわ。知り合ったのは、別れた後だから」 「そうか」  由希子は立ち上がった。 「ごめん。夕食の支度するから」  どうやら帰るように、促されたようだ。 「ああ。突然悪かったね」  俺は、ゆっくりと立ち上がった。 「気にしないで。それより、元気そうでよかった」 「君こそ、食事はしっかり摂った方が良いよ。くれぐれも体には気をつけて」 「お互いね」 「コーヒーご馳走様。美味しかったよ」  見送られながら玄関まで歩いていると、「ああ、そうだ」と言って、彼女はスマホを取り出した。 「よかったら、連絡先教えてくれない?」 「構わないけど、大丈夫なの?」 「どうして?」 「その、旦那さんのことがあるから」 「何、子供みたいなこと気にしてるの? 大丈夫よ」  久しぶりに由希子向かい合ってスマホを並べた時、不思議な光景に思えた。結婚をしていた2人がまた連絡先を交換するなんて。    今回はどこか複雑な気持ちな方が、強かった。
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