3 吉岡由希子

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 あの時間は、確かに嬉しかった。彼の言った通り、ハンバーグは本当に美味しかったし、それを囲むテーブルも賑やかで楽しかった。  とりとめのない話ばかりで、笑っていた時間の方が多かった気がする。  二人は私を優しく扱ってくれていた。この人達だと、うまくやっていけるかもしれない。はっきりとそう思った。  結婚すると、相手の家族まで関わってくる。それは、過去の恋愛から意識しているし、友人からも、しつこいほど耳にしていたことだ。  彼は本当に優しい人だと思っている。その気持ちは、今でも変わりはない。だけど、そんな彼を取り囲むこの家族とは、やっていけないと思うようになってしまった。  あんな二人から彼のような人間が育つなんて、どうやって結びつければいいのか、今でもよくわからない。そう思わせるくらいに、二人に対する目が変わった。  人間の本質を見極めるには、時間が必要かもしれない。それが全てではないだろうが、この経験で確信した。  冷静に考えたら、初対面で息子、弟の恋人を邪険に扱う人間の方が少ないかもしれない。相手の振る舞いを確認するのは、お互い様だ。だけど、私はそんなことにも、気が付かなかった。  今でも、そんな自分が好きではない。どうして、信じてしまったのだろう?
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