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4 吉岡由希子
玲奈が亡くなって、彼が目の前に現れるなんて。彼が、玲奈の葬儀を見ていたなんて。こんな都合良く事が流れるなんて、あるのだろうか?
不思議な何かが、それを意図的に動かしている。そう結びつけるほか、何も思いつかなかった。そもそも玲奈が亡くなったことも、不思議な何かの仕業なのか?
いや、そんなわけがない。自分でも考えすぎだと思った。
そもそも、不思議な何かとは、なんだ? 自分が自分を可笑しく思ってしまう。
少し疲れているかもしれない。ここ最近、心からゆっくりと、落ち着いて過ごせていない。
そう。私はきっと、疲れているんだ。
ソファーに体を預けて、天井を仰ぐ。何もしていないのに、体が重く感じる。
そんな時間をまた過ごしていると、誰かが玄関を叩く音が聞こえた。
インターホンは壊れている。この家の来客の合図だ。
掛け時計を見ると、いつの間にか、時間だけが進んでいた。こんな事は、久しくなかった。進まない時計ばかりを見ていたから。
重い体を起こして、立ち上がる。
玄関に向かうと、ガラスに人影が映る。
一体、誰だろう? 近所の人だろうか?
面倒な相手でなければいいが。そんな事を浮かべながら引き戸を開けた時、その相手に目を疑った。
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