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当然、私は、葬儀に参列しました。そこには沢山の人が、妻との別れを見送って下さいました。
その葬儀には、吉岡由希子さんも、いらしてくださいました。その時に、由希子さんと会釈を交わしたのです。しかし、肝心な話はしませんでした』
「肝心な話?」
俺は聞いた。
「追々、話していきますので」
若林は、手の平をこちらに向けて、話を遮るなと言わんばかりのポーズを見せた。
俺は、素直に従った。
若林は続けた。
『先程も言いましたが、妻としばらくの間、別々の生活を送っていました。要は、別居といえばいいでしょう。全く異なる場所で、全くお互いを監視し合わない生活を送っていました。
その時期に、友人から奇妙な話を聞いたんです。妻が、見知らぬ女性と一緒に生活していると。
そんなことは、どこにでもある話だと思われるでしょう。しかし、私が引っかかったのは、その後です。
妻とその女性が、まるで恋人のように見えたと。
私は耳を疑いました。決して、同性愛者を軽蔑しているわけではありません。ただ、新しいパートナーができたら、お互い報告して、綺麗に新しい道を進もう。そう妻から約束されていたからです。
私は、何も報告を受けていません。
後に、妻に連絡を入れたのですが、彼女には、何かの勘違いだと、すぐに跳ね除けられました。
私は首を傾げながらも、妻の言うことを信じることにしました。友人は、きっと錯覚していたのだと。
しかし、それから数年が経った最近のことです。ある男が、私の元に現れたのです。
男は自らを探偵だと名乗りました。どうして探偵が私の目の前に現れたのか、不思議でなりませんでした。
その探偵は、そんな私に構うことなく、自らの要件で、あれこれと話を尋ねてきました。
男は、ある依頼から、妻の過去を調べているようでした。なんでそんなことをしているのかは、教えてはくれません。
だから、彼女の現在を教えてくれるという条件の元、私は男に質問を答える。そう提示しました。
男は、渋々と了解してくれました。もちろん、依頼者には、内緒だと釘を刺されて。
探偵の男は、妻のことを打ち明けてくれました。
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